経営哲学

マネジメントと学習性無力感

【読了の目安 : 3 分】

学習性無力感とは

学習性無力感(learned helplessness)とは、長期にわたり挫折感を味わい続けることで、何をしても意味が無いということを学習してしまい、その状態から逃れようとする努力すらしなくなってしまうことで、学習性絶望感ともいい、心理学者のマーティン・セリグマンによって提唱された。

学習性無力感は、人が監禁されたり、暴力を振るわれたり、自分の尊厳や価値がふみにじられるような場面に置かれた場合に、その不愉快な状況から自ら積極的に抜けだそうとする努力をしなくなったり、実際には少し努力すれば簡単に抜け出せる状況でも、それすらも考えなくなったりする、拉致監禁の被害者や、長期の家庭内虐待の被害者などの、行動の心理的根拠を説明する理論として、注目されている。

この学習性無力感は、何も拉致監禁、家庭内虐待などがなくとも、今ではごく身近に見ることができる。そう、会社だ。

マネジメントの20世紀と21世紀

20世紀のマネジメントと21世紀のマネジメントは根本的に何が違うだろうか。それは、管理するかしないかの違いだ。

そもそも管理とは何か。

管理とは別の表現で言えば、【支配】である。支配と服従の関係性こそが20世紀のマネジメントだ。

果たして世の中に支配されたい人はいるのだろうか。もっとも、多かれ少なかれ、我々は支配を受けて育ってきている。家庭内の父親に、学校の先生に先輩に、会社では上司に。

結果、自分が人を管理する立場になった場合に、人を【支配】するということが逆に起こるようになり、それが連鎖することとなった。言葉は違えど、管理、監督、指示、命令、強制、脅迫、これらはすべて【支配】である。

奴隷制度は永続しない

支配と服従の関係は、歴史的にみても安定した試しがない。

奴隷制度が永続した文明は存在しない。一部の服従者は学習性無力感により支配から逃れようとすることを諦めるだろう。しかしながら、歴史的には、学習性無力感に負けなかった一部の勇気ある人は、その支配から逃れようとする、ひっくり返そうとする。したがって、支配は続かなかったのだ。

永続的な企業をつくろうとするならば、【支配】で人をコントロールしようとしてはいけない。けして学習性無力感に陥れてはならない。支配されていて人は全力を尽くすだろうか。奴隷のように支配されている社員が全力を尽くすとは思えない。

支配せずに人を活かす方法

支配しないで人を活かす方法として有効なのは、目標による方向づけ(Management by Objectives)である。しかしながら、目標設定を誤ってしまうと、支配と同じことを繰り返すことになるので注意が必要だ。

目標は売上と利益であってはならない。

それは、お客様にはまったく関係がない。

会社の夢とお客様の幸せを達成する数値を設定しなければならない。売上と利益は、その数値目標を追いかけた結果にすぎない。

お客様と無関係な目標(売上と利益)を追いかける限り、その会社は遠からず潰れる運命にある。それはトップの意思であり、その意思をもってお客様を積極的に無視せよと言っていることになるからだ。

お客様に直接関係ある数値目標を

このように、売上と利益以外の、お客様に直接関係ある数値目標により方向付けを行うことが、人を管理しないマネジメントである。

人を管理する世界は、人を使う世界のことだ。人を使う経営をするのか、人を活かす経営をするのか、人に笑顔がないのか、人が笑顔で働いているのか、どちらの会社が好ましいだろうか。また、これら両極端な会社が同じ条件で競争することになった場合、どちらの方が強いだろうか。

おそろしいことに、売上と利益を目標にする世の中のほとんどすべての会社は、マネジメントを人を使うことと勘違いしている。また、売上と利益をあげることこそが成果だと、それを公言する経営コンサルタントも間違っている。繰り返すが、売上と利益は結果であって目標ではない。

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