経営戦略

自律と自立の違いとは

【読了の目安 : 7 分】

自律と自立の違いについて調べてみると、それを適切に説明できているページはほとんどなかった。それどころか、間違っていると言わざるをえないものばかりだった。ここに、あくまでも自分としてこれが好ましいと思える定義をまとめてみた。

自律と自立の辞書的な意味

どこがどう違うのか議論に入る前に、まずは辞書的な意味を知っておかねばならない。

自律

他からの支配や制約を受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。

<対義語>;他律(自らの意識によらず、他からの命令や強制によって行動すること。)

自立

他への従属から離れて、独り立ちすること。独立。他からの支配や助力を受けずに存在すること。

<対義語>;依存(他に頼って存在すること。)

自律は自立の上位概念は間違い

自律と自立の違いについて考察した記事のほとんどが過ちを冒しているのが、自律を自立の上位概念として捉えてしまっていることだ。

そう捉える限り自律の概念を正しく理解することはできない。これはまったく逆である。

自律を自立の上位概念と捉えた場合の自律と自立の定義はこうだ。

  • 自律は共生を前提にしているが、自立は共生を前提にしていない。したがって、自立は利己的で自律は利他的である。
  • 自立は他はどうあれ自己流を貫くのに対し、自律は他との関係性の中で自分を律して行動することができる。
  • ハイハイをしていた赤ん坊がやがてみずからの2本の脚で立ち上がる。これが「自立」である。そして自分の脚で立った後、今度は自分の意志のもとに方向づけして進んでいく、これが「自律」である。

果たしてそうだろうか?

辞書では、他からの支配や制約を受けずに自分自身の規範に従って行動するのが自律であるとしているのに、他との関係性の中で自分を律して行動することができるのが自律というのは、どこか違和感を感じる。

自律と自立では状態や状況が違う

自律と自立の違いを考察したほとんどの記事で上記のような定義をされてしまっており、結果として、自律は自立の上位概念であり、自律がよくて自立はだめというような論調が目立ってしまっているのは、それが使われる状態や状況を考察に加えていないからだ。

もう一度冒頭の辞書的な意味を振り返ってみよう。

自律

他からの支配や制約を受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。

<対義語>;他律(自らの意識によらず、他からの命令や強制によって行動すること。)

自立

他への従属から離れて、独り立ちすること。独立。他からの支配や助力を受けずに存在すること。

<対義語>;依存(他に頼って存在すること。)

自律と自立とで、”自”と”他”との間にある距離を想像してみてほしい。何かに気づかないだろうか。

そう。自律は”他”の中、あるいは極めて近接し、その存在を無視できない状態にあるのに対し、自立は”他”の影響などほとんど無視できる状態にある。

例えるならば、国境を共有して隣接する大陸の国々と、海を隔てて孤立する日本のような違いだ。

この場合、大陸の国々は自律であり、日本は自立であるといえる。

実際には、食料やエネルギーなど様々なものを輸入に頼っている日本は真の意味で自立しているとは言えないのだが、自律と自立の違いの理解のための概念としてご容赦願いたい。

自律とは自立を生み出す能力

自律自立は常に主体性とリーダーシップを持つという意味において同義であるが、他者や環境などの外的要因の影響が無視できない場合に自律といい、他者や環境などの外的要因の影響をほとんど無視できる場合に自立という。

たとえば、ブルー・オーシャン戦略という有名な戦略がある。

有名な割に誤解が多い戦略であるが、その要旨といえば、競争の激しい既存市場をレッド・オーシャンとし、競争のない未開拓市場をブルーオーシャンと呼んで、生き残るためには新市場を目指せ、と説いているのであるが、これを誤認して大航海時代さながら海へ出て難破している例を多く見る。

そのロマンティックな響きにごまかされ、イメージを勝手にふくらませて勘違いしてはならない。ブルーオーシャンと聞いて大海原に航海に出てしまうのは、どこかにパラダイスな無人島があると期待しているに過ぎない。たとえそんな無人島を見つけられたとして、そこは文字通り「無人島」なのだ。

たしかに競合はいないが顧客もいない。

わかりやすいネーミングだけで概念的にわかった気にならず、その意味をしっかりと咀嚼する必要がある。ブルー・オーシャンは、レッド・オーシャンの中、あるいはすぐ隣にある。遠く離れて南洋の孤島ではない。

すなわち、自律とはレッド・オーシャンの中で競合にさらされない無競争状態を創りだす能力である。結果として無競争状態になったその状態を自立と言うのだ。

自律とは排他力を発揮することである

外的要因に囲まれた環境で、それに影響されない自立した状態をつくるとは、つまり、排他力を発揮するということにほかならない。

つまり、自律とは市場で排他力を発揮し、あたかも自立したような状態を実現することだ。

それは必ずしもNo.1であるとか、卓越しているとか、そういうことではない。マーケティングやコピーライティングの世界では、商品やサービスになんでもNo.1とか日本一などをつければ売れる、というような「浅い」ノウハウがもてはやされていて、それに騙されて購入している消費者も数多くいるのが現実ではあるが、そういうことをしなくても選ばれる、あなたの商品やサービスしか選ばれなくすることは可能だ

たとえば、顧客が購買を決める前には、比較検討の段階がある。この時点で顧客は二者択一にまで絞り込みを行うが、ここまで来ればほぼ間違いなく選ばれる、ということが実現できれば自立状態をつくれるわけだ。

そのためには、大前提として商品やサービスが一級品であることが条件だ。No.1とか日本一とか、本物とか真のとか、あえてそう言わずに自立状態を実現するのだ。

それが自律のマーケティングだ。

自律か自立か

こんな話がある。よくある事例なので、共感する読者も多いことだろう。

会社が目標を掲げる際、「自立」か「自律」かで悩むケースが多いという。「自律」つまり社員が自分で自分を律するようになると管理しにくくなり、キャリアアップのために辞めるのを奨励しているように見える。そのため結局、「自律」ではなく「自立」に落ち着くそうだ。

そこには、社員を囲い込んでおかなければほんとうに優秀な社員が辞めてしまうのではないか、という会社側の腰の引けた姿勢が垣間見える。

それは、子に「自立しろ」といいながら自分の手元から手放したくない親と同じだ。本気で自立を促したら、兄弟の中でもしっかりとしたできの良い子のほうが、これ幸いと出て行ってしまい、出て行ってほしい子のほうは石にかじりついても親元から離れない。親はそれを恐れているので、「自立しろ」といっても迫力がないし、子はそうした親の本心を見抜いているのでいつまでも甘え放題、好き勝手にふるまう。(社員が「よく辞める」会社は成長する!

このような事例は、自律自立の概念上の違いを認識していたら回避できたはずだ。

先の例に習えば、自立は自律の結果でしかないのだから、企業が求めるべきは、結果としての自立ではなく、行動としての自律であることがわかる。これは自立を選択した上述の腰の引けた会社と180度正反対の結論である。

つまり、根本戦略の違いであり、これを間違えてしまった場合、致命傷となる極めて重大な意思決定である。

自律は手段、自立は目的

以上より、自律自立の違いが明確になった。

また、自律自立かは無意味な議論であることもわかった。

なぜなら、自律とは外的要因(脅威)に脅かされない自立した状態(無競争状態)を創り上げる能力であり、自律と自立とは互いに因果関係にあるからだ。

つまり、自律の目的とは、自立である。

それは、排他力を発揮し、外的要因を排除する、脅威が及ばないようにすることであり、その目的において、あらかじめ外的要因(脅威)が及ばない無競争状態の環境を選択することは戦略的に正しい。

自律が自立の上位概念なのではなく、目的としての自立が手段としての自律の上位概念なのだ。

自律とは自分で自分の未来をつくること

こうして、再度冒頭の辞書的な意味を振り返ってみると、なるほど、自立はあり方・姿勢、つまり「状態」を示しており、自律はやり方・方法、つまり「行動」を示している。

それは、対立する概念ではなく、因果関係で結ばれた概念なのだ。

われわれは自立するために自律するのである。もっといえば、目まぐるしく変化し続ける環境に適応するために、自律し続けるのだ。

自律を諦めた人間に、自分でつくる自分の明るい未来があるとは思えない。あるのは、他人がつくった他人の未来だ。他律依存、指示命令、支配服従の世界だ。

自律し自立を目指す姿勢は、現状打破の創造活動であり、他律依存の姿勢は、現状維持の改善活動である。

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  1. 2014年 6月 15日
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  2. 2015年 2月 09日

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